1.老人性色素斑(日光黒子)・脂漏性角化症
シミの中で一番患者さんが多いタイプです。
主に中年以降(早い場合は20代から!)に出現する淡褐色~濃褐色の色素斑です。
顔面に多く出ますが、手の甲や前腕等にも多く見られます。
いわゆる、“日光露出部”に出ます。
形は円形~楕円形のものが多いです。
境界は明瞭です。
老人性色素斑が隆起してきたものを脂漏性角化症と呼び、皮膚良性腫瘍に分類されています。
長年の日光の影響で皮膚が光老化を起こして、色素細胞が活性化されることにより、生じます。
老人性色素斑は、Q-スイッチルビーレーザーや、トレチノインの外用で治療します。
脂漏性角化症は、隆起の薄いものはQ-スイッチルビーレーザーでも、取れることがありますが、基本的には、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)か、液体窒素で治療します。
予防と再発防止のために、日焼けしないようにしましょう。
2.肝斑
局所的な誘因なく、30代以降の女性の主に両頬骨上にできる褐色斑です。
特徴としては、両頬骨上に左右対称にできる、境界明瞭な褐色斑で、他に、前額部・鼻の下等にできることがあります。
90%以上は女性です。
ほとんどが女性にできるので、女性ホルモンの影響で色素細胞が活性化されるのではないかといわれていますが、詳細は不明です。
悪化因子として、妊娠・経口避妊薬があり、やはりホルモンが関係ありそうです。
日光も悪化因子です。
肝斑には、レーザーを当ててはダメです。
かえって濃くなってしまうことがあるからです。
トラネキサム酸というお薬を飲むのとハイドロキノンという塗り薬を塗るのが第一選択の治療になります。
あわせて、ビタミンCやビタミンEを飲んだ方がよいでしょう。
トラネキサム酸は、本来、止血剤で、プラスミンという物質の働きを抑制します(抗プラスミン作用)。
プラスミンは、血液や血栓を溶かす働きをします。
また、炎症反応にもかかわっています。
プラスミンが活性化されると、メラノサイトというメラニンを作る細胞が活性化されます。
トラネキサム酸がプラスミンの作用を抑えるので、メラニンが作られにくくなり、シミ(肝斑)が薄くなっていくと推測されています。
妊娠・経口避妊薬・黄体ホルモン・日光のそれぞれに、プラスミンの活性化を促進させる働きがあることがわかっております。
副作用は、「少しおなかの調子が悪い。」とおっしゃる方が時々おられる程度です。
ただ、不整脈、心臓病、脳の病気、血管の病気、血栓症がある方は、飲むことができません。
飲むとおなかの調子が悪くなる方や、不整脈以外の疾患によって内服できない方には、トラネキサム酸でイオン導入(イオン導入TA)ができます。
不整脈があったり、ペースメーカーが入っていたり等で、イオン導入もできない方には、トラネキサム酸を高濃度配合したものをご用意しておりますので塗ってください。
トランサミンとハイドロキノンだけでは取れにくいという方には、トレチノインという塗り薬を併用します。
ビタミンC化粧品を塗るのもよいでしょう。
ビタミンCローションをイオン導入したらさらに効果的です(ご家庭でもイオン導入してみてください)。
きちんと予防できる項目は日光のみですから、やはり日焼け注意ということでしょう。
3.後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
ADMは別名、両側性大田母斑様色素斑とも呼ばれています。
その名のとおり、大田母斑という青アザの仲間で、真皮(皮膚の深いところ)にメラノサイトがある色素病変です。
20代以降に出現します。
両側性に両頬(骨)・前額部両端・鼻に生じる雀卵斑(そばかす)よりやや大きめの色素斑です。
形は楕円形や点状のものあれば、ベタッとした形のものもあります。
色は褐色から灰褐色・紫褐色や青みがかったものまでさまざまです。
「シミ」を訴える患者の皆様の中に、このADMの占める割合は大きいです。
取るのに回数を要します。
ベタッとした形のものは、肝斑との区別が困難な場合があります。
また両者が混在している場合があります。
ADMはQ-スイッチレーザー照射でないと取れないものですが、肝斑はレーザーを当てると濃くなってしまうので、当てたらダメなのです。
治療は慎重を要します。
その他、そばかすや老人性色素斑の色の薄いものが多発しているときも区別が難しいです。
原因は、不明です。
治療は、Q-スイッチルビーレーザーを照射します。
予防は日焼けをしないことです。
4.炎症後色素沈着
ヤケド後のシミ、ニキビをつぶした後のシミ、虫刺されを掻いた後にできたシミ等、何らかの刺激・炎症等の後に出てくる色素斑を炎症後色素沈着といいます。
メラニンが皮膚の浅いところから深いところに落ちています。
どの部分にメラニンが多くあるかで、色が変わってきます。
浅いところ中心だと褐色、深いところにいくと褐色に灰色・紫色・青色が混じったような色になります。
治療ですが、基本的には、何もしません。
なぜなら、ほとんどが自然に治るからです。
例えば、誰にでも経験のある、身近な炎症後色素沈着で、日焼けでがあります。
太陽光線が刺激になり、炎症が起こって赤くなり、最後は黒くなります。
黒くなっても、季節が過ぎれば元のお肌の色に戻ります。
日焼けに対して、ヤケドに近い状態にならない限り、特別何か治療をすることはありません。
また、自然に治る可能性があるうちに、何らかの治療を加え、それが刺激になったり、運悪くかぶれたりしたら、自然に消えるまでの期間が延長されたり、ひどい場合は消えなくなる可能性もあり、基本的には何もしないのです。
ただし、例外があります。
ニキビの赤黒い痕は、積極的にケミカルピーリング(グリコール酸ピーリング・サリチル酸マクロゴールピーリング)+イオン導入(ビタミンCでのイオン導入やトラネキサム酸によるイオン導入)を受けられたほうがよいでしょう。
どれくらいたてば自然に消えるかというと、おおよそ、顔で半年、体・上肢で1年、下肢で2年です。
この期間を超えて、残っているものは残念ながら自然には消えませんので、積極的に治療を受けられたほうがよいでしょう。
治療として、ハイドロキノンというメラニンの生成を抑制する塗り薬を塗ることです。
ハイドロキノンの効果を上げるために、ケミカルピーリングを併用してもよいでしょう。
また、イオン導入(ビタミンCでのイオン導入やトラネキサム酸によるイオン導入)を併用するのもよいでしょう。
ハイドロキノンを使って取れない場合は、トレチノインという塗り薬を併用します。
皮膚の浅いところにあるタイプならば、Q-スイッチレーザー治療で取れることがありますが、レーザー照射により、変化のない場合、かえって濃くなる場合があり、注意が必要です。
5.雀卵斑(そばかす)
そばかすの特徴は、顔面、特に鼻背部・両頬に淡褐色の小色素斑が散在しています。
3歳~5歳で発症し、加齢とともに増強します。
日焼けでひどくなるといわれています。
夏に悪化し、冬によくなる方がおられます。
Q-スイッチレーザーで、きれいに消えますが、そばかすは体質によるものなので、しばらくすると再発してきます。
トレチノイン+ハイドロキノンを外用してもらう場合があります。
日焼けには注意しましょう。
6.扁平母斑(カフェ・オレ斑、茶アザ)
先天性で、体のどこにでも認められる境界明瞭な褐色斑で、いわゆるカフェ・オレ色をしています。
凹凸のない平坦な色素斑です。
また、思春期以降に、肩・前胸部・背部等に生じるものもあります。
これを別にベッカー母斑と呼ぶことがあります。
毛が生えていることが多いです。
扁平母斑は、治療に難渋します。
レーザーや塗り薬にいったん反応してくれるのですが、いずれ再発してくることが多いです。
また、レーザーでの治療の場合は、経過が3つのタイプに分かれます。
タイプ1:
治療後一時的に色調が薄くなりますが、すぐに元の色に戻り、さらに炎症後の色素沈着により色素が増強することがあるタイプ。
数ヵ月後には元の色調に戻りますが、レーザーが有効とはいえません。
半数以上は、このタイプです。
タイプ2:
治療後、色調が薄くなり時間とともに少しずつ濃くなってくるもの。
追加照射で色調が薄くなり、再発までの期間が長くなるので、レーザーが有効といえます。
このタイプの割合は成人で1/5以下、幼児では1/3以下です。
タイプ3:
レーザー照射後色調は薄くなるが、毛孔一致性に再発するもの。
毛穴のところのみ色素が増強して、かえって毛穴のみが目立ちブチ状になります。レーザーが有効とはいえません。
実際、レーザー照射をして経過を追わないと、どのタイプなのかわかりません。
レーザー照射をする場合は、一部だけテスト照射します。
テスト部位が6ヵ月後どうなるかで、どのタイプになるのか判断しようということです。
しかし、これもあくまでも目安に過ぎません。
以上、代表的なシミ6種類について、ご紹介いたしました。